直進安定性

元々の状態では直進安定性が悪すぎる

 Jessieさんにホイールアライメントを見ていただいたとき、私のような最近のローダウンバギーでは、キングピンの位置が望ましい状態と逆になっていて、直進安定性が良くない旨の指摘を受けました。
 このことについて、Jessieさんが改良方法を考えて下さったので、作業をした内容を報告します。
 理論上の詳しい説明については、よく訳が分かっていない私がここで説明するより、Jessieさんが詳しく説明されていますので、そちらを見て下さい。(説明2、『逆KPI(キングピン角度)の修正』)
 Jessieさんの説明写真の赤い車体は、私の車体です。

 下の写真は、Jessieさんのページから借りてきたものです。上は私の車体、下は同型の車体に今回の改造と同様の改造を施したtenさんの車体です。

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 下の写真の線の部分のようにハの字に取り付けネジの部分がなっていれば、直進安定性が良いのに、購入時の状態では、上の写真のように逆ハの字のようにキングピンの取り付けネジの位置がなっています。
 このため、ハンドルを切ったときの戻りの力が弱く、直進安定性のない車体になっているようです。

 これを正常化するためには、ナックルを左右反対に取り付けます。ナックルというのは、タイヤやディスクが取り付けてあり、ハンドル操作で左右に方向が変わる部品のことです。
 これを左右入れ替えただけで、タイヤがまっすぐになればよいのですが、キャスターをまっすぐにするだけの調整代がありません。
 そこで、ナックルを留める上のスイングアームを短くするか、下のスイングアームを長くするのかどちらかで、タイヤを前から見てハの字や逆ハの字にならずまっすぐなる状態にまで、つまり、キャンバーがポジティブにもネガティブにもなっていない状態にまで調整できるようにもって行きます。
 下のスイングアームで、現在付いているものより3cmほど長いものが手にはいるなら、それに付け替えれば恐らく上手くいくでしょう。
 しかしそれが無理となると、何とか金具の工夫で、上を短くするか、下を長くするかしなければなりません。
 Jessieさんから金具を使う方法の提示を受けて、私は下を長くすることしか頭に浮かびませんでした。ところが下は、スイングアームの取り付け部分を曲げて強度を持たせるように溶接してあります。
 ですから、ヒラコウのような鉄板で、ネジ止めして延長をするような金具を作りづらいのです。
 ところが、ATVRUNSの掲示板で、tenさんという方が、アッパーアームの短縮という方法を考案されました。
 これならなるほど上手くいくのです。なぜかというと、上のスイングアームを取り付ける部分は、下のように強度を持たせるための曲げ加工をしていないので、鉄板をネジ止めしてべたにくっつけることができるからです。

なんと部品まで作っていただいてしまった 

 tenさんの試みを参考に、「さてぼちぼちやってみるか」と思うまもなく、Jessieさんから、自分の勉強のために部品を作るから寸法を教えてくれという依頼が来ました。
 技術力のさほどないこちらとしては願ったりかなったりです。早速夜に、ノギスを片手に、なるべく正確に寸法を測りました。

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 そうして作っていただいたのが、右の写真の部品です。簡単な部品なので、これなら何とか私でも作れそうです。ただ、取り付けネジは、位置関係がありますから、穴をきちんと開けなければ、部品を取り付ける段階になって、上手く取り付けることができません。タイヤの取り付け精度に関わる部分ですから、なるべく精密に仕上げましょう。
 寸法は、Jessieさんのページにあるとおりです。厚さ4mmの鋼板で製作しています。

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 ただこれも、中国製バギーの完成度を考えると、同じ形番の製品でも、いくらか違う可能性もあるので、この計画を実行するときには、作る前に必ず自分の車体の寸法を測りましょう。
 ひどいときには、「前と後ろで取り付け寸法が違った」という指摘もあったりします。私の場合は、前を測っただけでしたが、後ろもぴったりでした。ラッキーでした。
 取り付け穴は、4つとも11mmであけています。下の図のJessieさんの指摘のように、ワッシャをおのおの挟まなくても、問題のない加工精度だと思います。

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 それで私は、キャスター角を付けるために、車体取り付け側の後ろの×2のワッシャを一枚にし、その分をスイングアームの前側に1枚だけワッシャをかませて、他のワッシャは省略しました。

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 この取り付け穴のうち、外側が元々車体に付いている金具への取り付け用です。内側が、新しく上のスイングアームを取り付けるための穴です。25mm内に寄せて穴を開けていますが、これ以上内に寄せると、スイングアームが車体に干渉してくるので、このあたりが限界のようです。
 スイングアームの元々の幅は決まっているので、この金具は、元の車体にある取り付け金具の後ろ側に前後どちらも取り付けます。車体金具の内側同士にしてしまうと、取り付け幅が狭くなってしまうので、上手く取り付けることができません。

 こうやって取り付けてみると、おおむね上手くいくものの、キャンバーをめいっぱい調整しても、どうしてもポジティブ側にほんの少しだけ寄ったところまでにしか調整し切れませんでした。
 それはこのまま我慢して、トーを前を後ろより10mmほど狭める方向で調整しました。

 また、後にも述べるように、ショックを元々付いていた270mmのもの(取り付けボルトの中心同士の間)から、長いものに換えれば、キャンバーをまっすぐに調整できる範囲にまで持って行くことができます。

取り外しは高ナットとボルトで

 スイングアームとナックルはテーパー状になっていて、かなりきつくはまりこんでしまっているので、普通に手で引っ張ったぐらいでは抜けません。そこで高ナットとボルトを使ってこれをはずします。
 使い方は、フロントナックルジョイントブーツの交換を参考にして下さい。
 私の場合、上だけがはずれても下側ははずれなかったので、2度に分けてこの方法ではずしました。その際片側をはずしてしまうと、ボルトの長いのが必要になってきますので、手間を惜しまず、内に入れる側のボルトは、長いものに換えておくべきです。
 私の場合、手間を惜しんで短いものでやろうとしたら、長さが微妙なところで、ネジの方が曲がってしまいました。

さらにキャスター角を持たせるためにボルト1つ余計に挟んだ

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 上の改造だけでも、元々の車体よりは直進安定性が格段に良くなりましたが、さらに直進安定性をよくするために、ボルトを一つ余計に挟んで、キャスター角を寝かせてみました。スイングアームのキャスターを取り付けている部分が、下よりも上の方が後ろに寝ている分、直進安定性が増すのだそうです。それで、上のスイングアームをなるべく後ろにずらして取り付けようという思惑です。
 写真は左側が前になります。
 本当はもう一つボルトを挟んで試したかったのですが、写真右手の奥に写っている前ブレーキオイル分岐金具がじゃまをして、このままだと1個が限界のようです。
 ブレーキホースの取り回しを換えれば、どうにかなるかもしれませんが、かなり面倒くさそうなので、今回はとりあえずボルト1個分で満足しておくことにします。
 今回のボルト一つ分なら、10mm×30mmのネジで車体に取り付けできました。

ショックもついでに取り替え

 Jessieさんに話をうかがったとき、400cc用の元々より少し長めのショックに換えて、堅さが丁度良く、ほどよく伸縮して、走り心地が良くなったということを聞いていたので、ショックも長めに換えてやろうと思っていました。
 オートバイの解体屋巡りをして、良いものが上手く安く手に入るか、ということもどうだか分かりませんし、奮発して高いものを買っても、それが私のバギーと相性良く使えるかどうかということも分かりません。それで、バギーを買った店が出品している3本組エアタンク付きの安いショックを買おうかと思っていたところでした。そうしていたところに、オークションで、台湾製という330mmのSRなどの400cc用というショックを見つけました。
 値段も中国製とさほど変わらないのなら、中国品質のものを買うより、台湾製の方が期待できるのではないかということで、これを落札することにしました。
 このショックの取り付けボルト穴は上下とも12mmですが、インナーカラー10mmが附属されているので、それを使います。

 この交換の結果、ショックが長くなるので、上に問題点を書いたキャンバー調整が、ネガティブ側までやろうと思えばできるようになります。
 結果的には、元々付いていたショックよりかなり柔らかいので、元のショックで調整していたのと全く同じままでも、空車の時にはかなりネガティブキャンバーになりますが、人が乗ってみると、丁度ポジティブでもネガティブでもない正立状態になるようでした。
 しかも柔らかいので沈む分、人が乗ると元のショックの時と同じぐらいの高さになります。後ろのショックまで交換する必要がなかったのは予想外のラッキーでした。

 この変更で、車体がほどよく伸縮する様になったので、この交換は成功でした。

長いショックはボルトがじゃまをする

 ただ一つ、この長めのショックを取り付けようとしたとき、上のスイングアームとナックルとを留めてキャンバーを調整するネジが、ショックに当たって干渉します。
 「せっかく買ったのに付かないのか!」とあせるNekoを尻目に、様子を見に来ていたJessieさんはこともなげにこのボルトを1cmほど切って短くしてしまいました。
 手際の鮮やかさと正確さ。感心します。

 私だけでしていたら、このショックを取り付けるのをあきらめていたかもしれません。

バンプステアの対策は必要なかった

 以上のようなスイングアーム取り付け位置の変更、ショック変更などによっても、私の車体では、バンプステアに問題は起こりませんでした。
 キャスター角を持たせるためにボルト1つ分余計に挟んだことに対するバンプステアについては、タイヤを持ちあげる時、幾分かはトーインに変化していくようになっているのかもしれません。しかし、それほどの変化があるわけではないので、調整が必要な範囲なのかどうなのかついての正確な判断が、経験の少ない私にはつきかねます。
 私の車体は、タイロッドが車体内側は下に、車輪側が上についているので、バンプステア対策にワッシャを挟んで対処しようにも微妙な調整はできません。ボルト1つを挟んで、結局下手な細工をするより、元のままが一番バンプステアの出ない状態のようです。

直進安定性大幅向上

 このような作業をした結果、私のバギーは直進安定性が大幅に向上しました。40Kmくらいならまっすぐ行きながらロールさせることができるようになったので、乗り心地は、全くの別物です。

 この作業と、エンジンサポートは、中国製のローダウンバギーを購入した場合、何をおいても実施すべき項目だと思います。

 なお、このホームぺージの写真は、ダブルクリックするとほとんど拡大画像を表示することができます。
 工作の参考にする場合は、拡大してご覧下さい。

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