車検の実際
車検とは
車検で検査することは本当に一部分・一時的
車検をすれば、その時から車検の有効期間内は車に安全に乗れる保証をしてもらったように思いがちですが、実際車検がそのようなものでないことは、自分で車を車検に持って行ってみればすぐに分かります。
車検場で検査することは、
- ウインカー・クラクション・ブレーキランプなどの灯火装置
- ワイパーの動作
- 直進安定性(サイドスリップ)
- スピードメーターが正しいか
- ブレーキがきちんと動作しているか
- ヘッドランプの光軸が規定通りか
- 排気が規定値以内か
(ディーゼルは目視のみ)
- ディーゼル車の黒煙は規定値以内か(年式により規定値が違う)
- オイル漏れ、ボルトのゆるみ、マフラーの穴あきなどの下回り検査
ということだけです。そしてこれらは、以後二年間の性能を保証するものではなく、検査した時点で正常であったということを保証するだけのものです。検査場での検査の所要時間は十分足らずで、分解検査などはいっさいしないので、例えば極端な話、ブレーキパッドがかろうじて残っているだけのような場合でも、検査の時に正常にブレーキがききさえすれば、車検には通ります。しかしこのような場合には、当然いくらもたたないうちにブレーキがきかなくなります。
このように、車検での検査は、検査時点で上記項目の性能が正常であったことを証明しているにすぎないということをきちんと理解しておくべきです。
業者のやり方次第・それをどこまで許容するか
それでは一般の業者に車検を頼んだ場合、良心的な業者であれば、次の車検までほおっておいてもたいてい大丈夫なのはなぜでしょうか。それは、業者が気を利かせて、次の車検までにだめになりそうな部品を、あらかじめ車検の時に取り替えてしまうからです。まだある程度使えそうでも一般的な使用状態で二年間持ちそうになければ取り替えてしまいます。それがある程度良心的に行われていればそれほど話題にもならないのでしょうが、「もうだめ」とかいいながら、まだまだ大丈夫そうな部品をどんどん交換して、整備代を稼ぐ過剰整備をされると、車検に要る費用が跳ね上がります。特に外車の場合など、そのようなことを耳にすることがあります。
最低限の車検の必要経費は2,200円少々だけ
本来車検に絶対必要な費用は、1800円程度の検査代・技術情報管理手数料400円、数十円程度の用紙代の他、強制保険代・自動車重量税だけで、それまでオイル漏れなどもなく正常に乗れていた車であれば、事前整備など何もしなくても、洗車さえしなくても車検には受かります。我々が車検の時同時に整備もしてしまうのは、実は車検の問題ではなく、車検をきっかけとして、自分がこの後安全に車を乗り続けるための先行投資をしているからなのです。
車検のシステムが分かるだけでも1度は自分で車検に持っていく価値がある
一度でも自分で車を車検に持って行けば、このような車検のシステムが分かります。車検で何を検査しているのか、車を安全に乗り続けるためには定期的にどのようなことをしたほうがよいか、業者が車検費用として請求する項目のうち、自分でやって安全性を損なうことなく節約できるのはどこなのか、このようなことが見えてくれば、自分で車検に車を持って行く価値が十分にあるのではないでしょうか。
自動車重量税は13年経過、18年経過で高くなる
毎年課税される自動車税、車検時に課税される自動車重量税は13年経過で高くなり、さらに、自動車重量税は18年経過でももっと高くなります。
建前は、それだけ経過した車は、エコではないからということですが、エコカーだと言われる車をどんどん使い捨てるのと、古い車を大切に乗るのとどちらが本当のエコでしょうか。
結局これは、新しい高い車をどんどん買わせて、どんどん使い捨てにさせ、大手企業を設けさせるための政策で、建前のエコは隠れ蓑に過ぎません。
確かに、黒煙をもくもくと吐き出すディーゼルのトラックを見ていると、「どうにかならないのかなあ」という気持ちにならないではありませんが、そんな車は、現在の車検制度では、黒煙に対する規制が、昔よりもかなり厳しくなっているので、まともなやり方をしている限り、絶対に車検には通りません。
自動車税が、ガソリン車の13年に対して、ディーゼル車は11年で増税になってしまうのも、やはり、新しい車をどんどん使い捨てさせる戦略の一貫です。ディーゼル車は、排ガスの規制が車検時とても厳しいので、現在の車検制度下では、まともに車検を通すこと自体が難しいのに、さらにこんなに税金を高くすることで、買い替えを加速させることを目論んでいるに違いありません。
光軸検査の下向きへの変更で車検に通らなくなるケースも
更に極めつけは、車検時の光軸検査のやり方の変更です。
光軸検査は、2015年(平成27年)9月1日から、1998年9月1日以降に製造された車を対象に、もう既に基本は下向きでの検査に変わってはいましたが、これまでは暫定的に、下向きで合格点が出ない場合は、従来通りの上向きでの検査で合格になっていました。
ところが、今回2024年5月の岡山の軽自動車検査協会の検査では、下向きだけの検査に変わっていました。私のハイゼットは純正のH4ハロゲンバルブから、カットオフラインのはっきりしない安物HIDに取り替えているので、文句は言えない面もあるのですが、それにしても新しい検査の方法では、ヘッドライトのガラス面が経年変化でくすんだだけでも、合格できないこともあるようです。
右は、前回の2022年の車検時、壊れていることが発覚して新品に交換していたので、レンズがクリアーで、同じHIDでも特に問題はなかったのですが、左の昔から交換していない黄色くくすんだレンズの方が問題でした。)
ヘッドライトの光軸検査に合格できなければ、その車に乗り続けることはできません。今回の検査方法の変更は、「その検査方法に対応した車が増えてきたから」ということですが、それは逆に言えば、まだ大切に使われているその他の車を切り捨てようとしていることに他なりません。そんなことで、高価な大事に乗ってきた車を乗れなくなってしてしまうのは、本当にやりきれません。
いい加減、大企業を儲けさせる使い捨てサイクルから脱却して、真のエコを大切にする社会への転換を図ろうとしてほしいものです。