電気工作の基本
車いじりにおける電気工作の基本
電源の種類
車に流れている電源コードには、電気がいつ流れるかによっていくつかの種類があります。
まず第一が、常時電源。車のスイッチを切ってもバッテリーからいつでも電気が流れています。(バックアップ電源ともいう。)
次が、イグニッションキーと連動する電源。これは、イグニッションキーを入れたときだけ電気が流れます。(アクセサリー電源 ACC)
そして、夜ヘッドライトを付けたときだけ電気が流れる電源。イルミなどと書かれたりします。
用途に応じて、これらの中の一番使い勝手がよいところから、電源を取りましょう。 普通は、車のスイッチと連動するACC電源を取るのが一番使い勝手がよいことが多いはずです。
ヒューズ取り替え型の分岐部品を使おう
電源を取るには、オーディオ周りなら、オーディオを取り外した際、どのコードが上述のどの電源かが分かるので、そこから分岐させるのが手軽かもしれません。
電源の種類を見分けるには、社外のオーディオがついているなら、そのコードに種類が書いてあるので一発で分かります。
純正オーディオの場合は、そのような注記はないので、ディーラーに行って、カプラーのどこから出ているどの色のコードがどういう電源なのかという資料をコピーしてもらいます。
自分が車を買ったディーラーでなくても、その車を販売しているディーラー(一般の車販売店ではなく)なら、お願いしさえすれば、どこでもすぐにコピーしてくれたり、アドバイスをしてくれたりするはずです。
オーディオを取りはずす場合ではなく電源を取りたい場合や、別途電流量を気にせずに電源を取りたい場合は、ヒューズボックスのところから取るのが手軽です。
最近は、ヒューズと取り替える形で電源を取ることができる部品をホームセンターなどでも、簡単に入手することができます。
取り替えるヒューズによって、大きさや許容電流量が違う製品があるので、適当なものを選びます。
どのヒューズと取り替えるかは、どのような電源がほしいかで決めます。普通はスイッチの入り切りに連動させる電源が便利でしょうから、ラジオなどのアクセサリー用のヒューズと交換します。
これを使うと、ヒューズと取り替えても、取り替えたヒューズを通さずに電源が取れるので、オーディオのコードから電源を分岐させた場合のように、元の機器プラス追加機器の使用電力量が、ヒューズの容量を超えないようにするというようなことを気にする必要がありません。
それに、ヒューズと取り替えるだけですから、コードをビニール皮膜をむいで結線するなどという手間も要らないので、とても手軽です。
これを使用する注意点は、ヒューズボックスの端子には、バッテリー側と機器側とにそれぞれつながっている部分があるので、バッテリー側(つまり電気が流れてくる側)に、ヒューズ端子の分岐コードが付いている側を合わせて差し込むということです。
これを逆にすると、追加機器の配線の電気も、ヒューズを通過していくことになるので、電源は取れますが、追加機器の電力量と元々ヒューズから接続されている機器の電力量を足したものがヒューズ容量を超えないようにしないと、ヒューズが飛んでしまいます。
ただし、車を設計したときには、そこで流れる電流量を計算に入れて配線の太さを決めているはずです。このような増設を行うと、その設計電力量を超えて電流が流れる可能性がありますから、その点は注意しておかないといけません。
そうならないためには、あえて上記の説明とは逆にこの増設部品を設置して、元のヒューズに増設した部品の電流も流すという考え方もあります。
ヒューズ取替部品も自分で加工できる
使っていたヒューズ取替型の電源取得部品のヒューズを切らしてしまったので、よく見てみると、写真の左の切り欠きのようなところに新しいコードがはんだ付けされていて、それをカバーで覆っているような構造になっていました。
これなら、新しいヒューズのプラスチック部分をうまく切り欠くことさえできれば、そこにコードをはんだ付けして、壊れた部品のカバーを被せることでうまく作り直すことができます。既製品は結構値が張るので、普通のヒューズを流用できれば、少しは節約ができます。
マイナスはボディーアース
もうご存じだとは思いますが、よほど昔の車でない限り、大抵の車は、バッテリーのマイナス端子は、ボディーに接続されています。ですから、機器の大概黒色の線になっているマイナス端子は、ボディーの金属部分に接続すれば大丈夫です。
赤のプラスの端子は、電源を取った線から接続します。
結線上の注意点としては、ボディの金属部分なら大概マイナス電流は流れていますが、ペンキが塗ってある部分や、金属部分でつながっていないところなど、電流が流れないところもあります。
機器を接続して、うまく動かない場合、このアースの接続不良であることも多いので、取り付け時、テスターか、導通を確かめることができる簡易テスターなどで、アースがきちんと取れていることを確認しておきましょう。そして、取り付け後不具合の場合も、アース不良を一度疑って再点検してみることをお勧めします。
もう一つの注意点は、ボディー部分はマイナス電流が大概流れています。ですから、プラス電流が流れている電源端子を不用意にボディーに当ててしまったりすると、ショートして火花が散ることがあります。気をつけてください。
そのようなことがあって以後、どこかの電気機器に不具合が起こるなら、そこに関係したヒューズがどこか切れているはずです。
カープラグの増設は電源から
市販のカープラグの増設部品は、普通カープラグから電源を取るようになっています。しかしそれでは、元々付いているカープラグが使えなくなるし、不格好ですから、電源を取るカープラグの部分は切り取って、上のヒューズボックスから取った電源につないだ方が、スマートに仕上がります。
追加機器といえば、カープラグから電源を取る仕様のものがほとんどですから、カープラグの増設をすると同時に、脱着することのない器具については、同様にカープラグの部分を切り取って、直接電源にコードを接続することで、カープラグの使用個数を抑えることができます。(下に紹介したように、シガーソケットプラグ内で12Vから5Vに降圧しているような製品の場合はこの加工をしてはいけません。)
増設用のカープラグについては、私は4連のものを助手席下の目立たないところに取り付けています。写真の製品は、4連プラグにさらにUSBソケット、スイッチが付いているので、取り付ける場所・使い方によってはこういうのもよいかも知れません。
なお、カープラグの外側は、マイナスのアース、真ん中のぼっちの方はプラス電流が流れます。結線の時には参考にしてください。
シガーソケットプラグで降圧している場合は注意
ドライブレコーダーなど、シガーソケットプラグ内で12Vから5Vに降圧しているものがあるようです。このような製品に対して、上記のようにソケットを切断して、電源に直付けすると、本来5V使用のものに対して12Vを供給することになってしまうために、機器が壊れてしまいます。注意しなければなりません。
コード分岐のやり方
車に電装品を取り付けるとき、電源を取る・配線を二つに分けるなど、1本のコードを2本以上に分岐しなければならない場面はたくさんあります。
何か追加電装部品を買ったときにこの分岐用に必ず付いてくるのが右の写真の青色の部品のようなものです。ですが、これは、簡単に接続できるものの、「確実な接続」という観点からすると、少し難があるようです。
それよりも、コードの途中の皮膜をカッターなどでぐるりと傷つけて切り、ちょっと皮膜を引っ張って寄せると上の写真の様に、裸の部分が出てきます。これに直接新しいコードの芯線を出してぐるぐる巻きつけ、ビニールテープで絶縁するのが一番確実だそうです。
それだけでも実用上十分ですが、より安全を期するなら、このぐるぐる巻き部分をさらにハンダ付けすれば完璧です。
コードの途中のビニールを少し剥いて寄せるには、ニッパーなどの様に、コードのビニール剥きの切れ込みがあるようなもので挟んで引っ張ると割合簡単に写真のような状態にすることができます。
ただ、コードにも太さが色々あるので、そのような工具を使う場合は、コードの太さに合ったものを使うことが大切です。
ギボシ端子の接続をマスターしよう
車の電気工作をする場合、右のようなギボシ端子でコードを接続する要領を覚えれば、自信を持って作業に当たれます。逆に言うと、これができないと、車の電装品の取り付けなど、ポン付け以外は何もできません。
この部品や工具は、ホームセンターやカー用品店などで手軽に手に入れることができます。エーモンの少数を小分けしたものも手に入りますが、ちょっと作業に慣れてくると、これを使おうとする機会はすぐに増えてくると思うので、雄雌、カバーなどを100個単位で袋詰めしているものを買っておくとよいでしょう。
これを結線する工具は、左の写真のようなものです。電工ペンチにも、3つの種類があります。詳しくは、別ページに解説しましたので、リンクを見てください。
車工作を始める場合、とにかく一番最初に手に入れるべき電工ペンチは、ギボシ端子を接続する、オープンバレル(ファストン)端子接続用の電工ペンチです。
なお、ストレートは、知る人ぞ知る会社です。品質の良い工具を安価で売ってくれる会社の一つですので、ものによっては使ってみても良いでしょう。
ギボシ端子接続の実際
上にも書いたように電源から来るプラス端子は、ボディーに直接触れる可能性が少ないように結線しなければなりません。
従って、プラスの端子は、電源側に来る方をしっかりカバーで包まれている雌、機器側の方を雄で結線します。
マイナス端子の方は、プラス端子に間違って結線することがないように逆に端子を付けます。つまり、ボディー側から来る方は雄をつけ、機器側の方が雌になります。
マイナス側は元々、アースとしてボディーに流れているので、むき出しになってボディーと触れても全く問題がないからです。
アース・電源接続端子の製作
接続機器が増えてくると、アースのねじ止めも大変です。普通機器に付いてくる金具は、ボディーのボルトにねじ止めするようになっていて、それの数が増えてくると、ねじ止めの際、挟まなければならない端子が増えるからです。
それにボディーの金属部分ならどこでもアースを取れるとはいえ、きちんとアースを取れ、ねじ止めできるポイントというのも探しにくいこともあります。
そこで私は、一カ所ねじ止めすれば、後はギボシ端子で接続できるように、アースの配線を4本ぐらい分岐した金具を自作しています。
電源コードの方も、これを造っておくと、機器の増設も、機器側のカープラグをギボシ端子に変更するだけで簡単にできます。
写真のリングスリーブ(かしめ部分)は、もちろんこの後ビニールテープで絶縁します。左のビニールテープで巻いている部分は、上で説明したコード分岐のやり方でヒューズ取り替え型の分岐部品を、追加の4つ口部分に枝分かれさせた所です。写真には写っていませんが、この下にヒューズから分岐した元々の差し込みがもう一つあります。
これで5つの電源をいっぺんに取れるケーブルが出来上がりました。
電気工事用の圧着ペンチが便利なことも
わざわざ別に買い求めることはありませんが、もし持っているなら、電気工事用の圧着ペンチなども便利な場合があります。
これはリングスリーブという安価な部品でコードを何本も一度で圧着してしまえるので、上のアースや電源の分岐を何本もさせるような場合は、これを使って、後はビニールテープで巻いておくとすぐにできてしまいます。
電気工事用の圧着ペンチの柄は、車用の赤に対し、写真のように黄色になっています。
ただ、ペンチ自体はかなり高価ですので、もう既に持っている方用の情報です。似たようなペンチに、アーシングケーブルなど太いケーブルに接続する車で使うための圧着ペンチもあります。これを流用してリングスリーブを接続してもさほど問題ないような気はしますが、厳密に言えば太さなどの規格はやはり違うようです。
ビニールテープは嫌いだ べたつきの少ないハーネステープ
絶縁の際、普通使うのはビニールテープですよね。ですがこれが割合始末に悪い。
最初はいいのですが、ちょっと時間がたつとすぐべとべとになってしまいます。家庭用の電気工事などでも、何かと言えば主力として使われるビニールテープですが、家の電源など2・30年はやり換えをすることなく使うことがざらですから、そのような物に、こんなビニールテープを使って本当に大丈夫なのでしょうか。
家庭用の場合、結線したときにはジョイントボックス内に結線を収めなければならないことが法律で決まっているはずなのですが、実際のところそんなことはお構いなしに、このビニールテープで巻いただけの電気工事をしていることが結構多いはずです。
私も嫌に思いながらこのビニールテープを使ってきました。でも、このべたべた、どうにかなりませんかね。ということで最近愛用しているのが、車用などで販売されている、べたつきの少ないハーネステープです。普通のテープに比べると1個100円程度と少し高めではありますが、あまりべたつかないので、使っていて気持ちがいいです。
これを使い出すと、もう普通のビニールテープには戻れません。
自己融着テープ
用途によっては、自己融着テープもお勧めです。
これは、テープ自体に粘着力はありませんが、2倍程度に伸ばしながら貼ると、テープ同士がくっつきます。べたつきはなく、耐久性もあります。
少々高価ですが、効果的に使うと便利な製品だと思います。
なお、日東のホームページには、「 現場では、さらにこの上にビニル粘着テープで保護巻きをし、絶縁効果を高めています。」と書かれています。
プラスコントロールとマイナスコントロール
普通に車を触っている分にはあまり意識する必要がないかもしれませんが、HIDキットを取り付けたり、社外製の電源を制御するようなキット商品、たとえば間欠ワイパーやリモコンドアロックなどを取り付けたりする場合には、これについて知っておく必要がある場合があります。
プラスコントロールとは、「プラス-スイッチ-機器-マイナス」というように、スイッチが機器よりプラス側にある場合、マイナスコントロールは、「プラス-機器-スイッチ-マイナス」の様に、機器よりマイナス側にスイッチがある場合に言います。
これは、ひとつの車の中でも、部品によってこの両方の繋ぎ方があるので、誤解しないようにしなければなりません。
また、これはアースがプラスかマイナスかということとは全く関係がありませんので、注意が必要です。HIDの取り付けなど、素人が質問に答えるページでは、プラスコントロール・マイナスコントロールと、アースのプラス・マイナスとを混同している回答が時にあります。気をつけましょう。
12V電源を用意しよう
LEDなどの商品を点検するのに、家に、家庭用コンセントから12Vを取り出せる電源を用意しておくと便利です。
なくてもさほど困ることはありませんが、これを用意してあると、車に取り付けなくても、事前に家で製品の点検ができます。