作業効率化実務編
技能試験 -作業効率化 実務編-
作業の効率化を考える
技能試験の練習を初めてやってみて、前項で書いたように、脳内でいくらできるつもりでも、実際に40分の短い試験時間に余裕を持って完成できなければお話にならないので、このページでは、作業を効率化する手だてを実際の作業方法の方面から考えてみます。
複線図
複線図には、白・黒・赤・緑が分かりやすいように、色ペンを使います。白色はあまりいいものが無く、どうも見にくいので、私は白のイメージに近くするため、蛍光マーカーの黄色を使いました。
使うたびにキャップをしていると時間がかかるので、書く間、キャップをはずしたままにしておきます。
リングスリーブで間違いやすいのは、2mmの芯線ケーブルですから、これを間違わないように、青丸で強調しておきます。
この段階で、リングスリーブの大きさ、刻印の違いも書き入れておきましょう。
テストでは、A3の問題用紙の下余白に書き込むことになるので、A4の半分ぐらいの大きさで練習しておくと、大きさがちょうど同じくらいになるようです。
最初に複線図を書く段階で結線を間違えてしまうと、作業後の点検も複線図に基づいて行いますから、誤接続に非常に気付きにくくなります。
作業が完了して、複線図を使いながら間違いなどを点検して、まださらに余裕があるようであれば、単線図の通りに結線ができているか、もう一度回路をたどりながら点検しておくと、そういう間違いでも見つけることができるかもしれません。
ケーブルを切ってから作業
3芯のケーブルのところを2芯で切ってしまったり、太さの違うケーブルを取り違えたり、長さを切り間違えたりと、慣れないうちは間違ってケーブルを切断してしまいはしないかといろいろ心配になり、一つずつ器具を取り付けながら、ケーブルを切ってというような作業をしたくなってしまいます。
ですが、ランプレセプタクルや引っかけシーリングを取り付けてからケーブルを切り、ジョイントボックス用の芯線加工をする、というような手順でやると、長いケーブルを振り回しながら、工具を何度も持ち替えて作業をしなければならないので、勝手が悪く時間のロスになります。
同じく機器を一つ一つケーブルに取り付けて作業していくにしても、ケーブルを最初に切ってしまってから、機器を取り付け、次にケーブルを仕上がりのような形状に整形して、それからジョイントボックスの絶縁皮膜を剥くという手順で作業をする方が、やはりかなり手っ取り早い作業になります。
もっと時間短縮を図ろうとして、機器を取り付けないで一気に全部の配線の用意するというやりかたもあるかもしれません。
しかしこれをしていて、練習2周目の終わり頃、引っかけシーリング・ランプレセプタクルなど2cm、4cmのシース剥きでいいところで、10cmも剥いてしまうという凡ミスを立て続けにしました。
慣れてきたところで調子に乗ってする、うっかりミスです。
それと、このようなことをすると差し込みコネクタの接続の12mmと、コンセントやスイッチの接続の10mmと、絶縁皮膜の剥きしろの違いは、1mm2mm程度になってしまうので、結線時に上下左右を逆さまにしてしまう恐れも無いとはいえません。
このようなことから、配線を用意するときに、全部ケーブルの用意だけを先に済ませてしまうのではなくて、器機の接続だけは先に済ませておく方が、私の性には合っています。
ケーブル切断の寸法や本数は単線図を参考にする
複線図を書く練習をしていて気付いたのですが、ケーブルの長さを複線図にわざわざ書き込むよりも、試験問題に示された単線図の方が、ケーブルの種類や長さ、芯線の数、本数などははるかに見やすいです。単線図には、それらの種類がきちんと示されているからです。
VVF2.0-2C 2.0mmの2芯
VVF2.0-3C 2.0mmの3芯
VVF1.6-2C 1.6mmの2芯
VVF1.6-3C 1.6mmの3芯
VVF1.6-2C×2 1.6mmの2芯 2本
改めて書かないでも明確に分かるものをわざわざ書き直すのは、時間の無駄ですし、間違いの元ですから、ケーブル切断には単線図を使用し、ケーブルを間違う心配がないように、
2.0mmの2芯(電源線など)青
→2.0mmの3芯
→1.6mmの3芯
→1.6mmの2芯
の順番で切断して、作業台の上に作品の形になるように並べておくとよいでしょう。
少々ケーブル切断の寸法を間違えても「せわーない!」
ケーブルの長さを少々切り間違えたとしても、解説書(『第二種電気工事士技能試験公表問題の合格解答』)によれば、機器の中心から中心までのできあがり寸法が50%以下にならなければよいようなので、あまり気にしなくてもよいかもしれません。(長いのは減点なし。)
だいたい、出題は15cmか、ぜいぜい20cmですから、50%まで許されるのなら、少々長さを間違えても、一本を中途半端に長く切りすぎて他にしわ寄せがいくようなことがなければ、それほどの致命傷になるはずはありません。
35cmか、30cmか、間違えてもぜいぜい5cmくらいのことが大半でしょう。たとえ30cmの所を25cmにしてしまったとしても。シースのはぎ取り寸法を左右それぞれ7cmくらいに少し短くしておけば、何の問題もありません。
たとえかなり短くなってしまった場合でも、リングスリーブ接続部分の絶縁皮膜露出部分が、絶縁テープを巻けるように最低2cm以上あればOKなので、シース剥ぎ取りを5cmぐらいにして接続すれば、リングスリーブ接続部分として絶縁皮膜を2cmくらい剥けば、おそらくそれでなんとかなります。
あわてて未完成が一番いけません。未完成は命取りですから、些細なことは気にせず、落ち着いてリカバリーし、さっさと接続を完成させてしまいましょう。
ケーブル切断寸法
ジョイントボックス・アウトレットボックス→+10cm
ランプレセプタクル・引っかけシーリング・スイッチ
→+5cm
端子台・配線用遮断器 →+3cm
上掲書によると、端子台はプラスなしですが、ケーブルに余裕があれば、これくらいは足しておいた方がいいようです。
端子台接続用のケーブル切断を最後にして、長さの余裕を見てから、切断寸法を決めましょう。
1.6mm2芯のケーブルは、普通5cmくらいは余裕があるはずなので、最後に残ったものをそのまま使うと、これ以上の長さが確保できるはずです。
なお、この長さは、切断寸法であり、シースの皮むきの寸法ではありませんから注意してください。
シース・絶縁皮膜の皮むき寸法
ジョイントボックス→シース 10cm
アウトレットボックス→シース 13cm
絶縁皮膜 リングスリーブ→20mm程度
差込コネクタ→12mm?(指定の長さ)
埋め込みスイッチ・コンセント→シース 10cm
コンセントを横に渡す場合は短くなりすぎるので
→シース 7cm
絶縁皮膜 片切スイッチ・4路スイッチ・コンセント
接地極
→10mm?(指定の長さ)
3路スイッチ・パイロットランプ
接地極付きコンセント
→12mm?(指定の長さ)
引っかけシーリング
→シース 絶縁皮膜剥きの長さ+5mm
絶縁皮膜 10mm?(指定の長さ)
ランプレセプタクル→シース 4cmよりちょっと短め
絶縁皮膜 →18mm
露出型コンセント→シース 3cm
絶縁皮膜 →18mm(ねじ止めの場合)
端子台・→シース 5cm
絶縁皮膜 →11mm?(座金の長さより+3mm)
配線用遮断器→シース 5cm
絶縁皮膜 →12mm
絶縁被膜剥きの長さは、実際に支給された材料のストリップゲージに書かれている寸法で決めます。
特に差し込みコネクタは、材料確認の時ゲージの長さを事前に確認しておくと、作業にスムーズに取りかかることができるでしょう。
私が練習で使っていた差し込みコネクタは11mmのものでしたが、実際に試験で支給されたものは、12mmでした。
引っかけシーリングなどのねじ止めリングの作り方
芯線を18mm剥いで、付け根の所から2mmの所をL字に折り曲げ、VVFストリッパーで先端をはさみ、くるりと回してリングを作ります。
最初にL字に曲げておかないと、皮膜のかみ込みなどの不具合が起こる可能性があります。
2本同時に輪作り可能。(あまり時間短縮にはならないかも)
一度輪を作ってしまってから、取り付ける際に右回りの向きになるように、それぞれのコードをひねって調整します。
結線を間違わないために
ジョイントボックスやアウトレットボックスでの接続用の皮膜剥ぎ取り後は、電源側から来る白黒の配線だけを、最初にL字に立てておき、その他の線は、内側に寝かせて折ってしまいます。L字に立てるのは、電源からの白黒線、器機に行く白、スイッチから来る黒(ただし、3路スイッチの電源からではない黒は要注意)、コンセントに行く白黒線などです。
こうすればスイッチからきた白線・器機から来る黒線を、間違えて電源側の白線・黒線と結線するという馬鹿なミスを防ぐことができます。
分かっているつもりでも、練習ではこの手の馬鹿なミスを私は結構やりました。
まず電源側の白を結線します。電源から来た白と、器機・コンセントからの白を結線し、それが終わったら、それをすぐに邪魔にならないように横に寝かせてしまいます。
次に、電源から来た黒線を結線します。スイッチやコンセントに行く黒を、複線図を見ながらつなげます。
そして最後が、スイッチから来る白、器機から来る黒、スイッチとつなぐ三芯の赤、3路の赤白です。
特に気を遣わなければならないのは、電源線からくる2mmの線をリングスリーブで結線しなければならない所です。これらは2本であっても、○ではなく小の刻印となります。
○の所を小で刻印した場合、上から圧着し直せば、小の刻印が消え、○になりますから、手軽に修正できますが、その逆はできません。リングスリーブの結線を一度切って、皮膜を剥き直し、もう一度結線しないといけません。リングスリーブのやり直しは結構な時間のロスになりますから、使用刻印の是非も含めて、注意しないといけません。
なお、リングスリーブをやり直す場合は、リングスリーブの半分ぐらいの所をペンチで切り、残りを引っ張って取ると、ちょっとでも長さを多く残すことができます。
候補問題発表にかなり具体的な内容が実は示されている
練習がほぼ1回通り終わる頃になって、今更ながらやっと気付いたのですが、発表されている候補問題には、使用ケーブルの種類、、パイロットランプの常時・同時点灯の別などが、もう既に書き込まれています。
これまで何となく、パイロットランプなど常時になるか、同時になるか、意地が悪ければ異時になるのかなど、本番の出題を見てみなければ分からないと勝手に思いこんでいました。でも、この書き込みがある以上、問題によって、常時になるか、同時になるのかは前もって既に決まっているということです。
これだけはっきりと仕様を公開してくれていれば、後は寸法の指定など、些細な違いがあるだけです。
もう一度、発表されている候補問題の仕様を確認して、問題ごとに、どこまでは当日も確実にそうなのかを確認しておくと、試験に臨む際の気持ちの余裕も生まれるのではないでしょうか。
たとえば、平成27年度の公表問題No.8の場合、これまでであればリモコンリレーへの接続ケーブルの指定がVVF1.6-2C×3と指定してあったのに、今年は、この注記が消えています。そこで、3本ケーブルを使用したやり方ではなく、この問題の渡り線を使ったバージョン、つまり、VVF1.6-2C×2の指定で出題されるのではないかというのが、ネットではもっぱら噂になっています。
果たして本当にそういった出題になるのかどうか、興味深いところです。
ちなみに、平成27年度初日は、メタルラスの処理を伴うNo.13でした。平成22年2日目と同じ問題ですね。
平成27年度2日目は、公表問題No.4でした。単相200Vの回路に100Vのランプレセプタクルを取り付けるやつです。
技能の練習をまじめに
これまで何度か書いてきたように、脳内でいくらできるつもりになっていても、実際に40分の短い試験時間に余裕を持って完成できなければお話になりません。
技能の練習をいくらかやってみて、考えているだけでは思いもつかないような信じられない手違いを結構自分はするものだということが、身にしみてわかりました。
これまでたくさんの弟子を指導してきた師匠によると、やはり2回通りは通して候補問題の練習をした方がよいということです。
私の場合、2回目の最後の3問を練習した際、つまり試験前日、それまでしなかったような凡ミスばかり立て続けて3問ともしてしまいました。
上にも一度書いたとおり、たとえば引っかけシーリング・ランプレセプタクルに接続するのに、2cm、4cmのシース剥きでいいところを、10cmも剥いてしまうとか。挙げ句の果てには、リングスリーブ○の所を小の刻印。
慣れてくると不注意になって、「分かっちゃあいるけどやっちゃった!」的なミスが出てくるものなのですかね。
引っかけシーリングや露出型コンセントでシースを10cmも剥いてしまうと、その部分がとっても短くなってしまいます。それでも減点にならないくらいぎりぎりでごまかせるでしょうけれども、剥いた瞬間に気付いても、後の祭りです。
また、根を詰めて練習をやって、本番までに何も作業をしないで時間が空くのも、ちょっとつらいかもしれません。
練習をしない合間があると、微妙に作業の感覚を忘れていて、「あれ、ランプレセプタクルって、何センチで剥くんだったっけ?なんか長さがおかしいぞ。」というようなことがありました。
運動選手と同じで、本番まで感覚をキープしておくということも大切です。