試験対策

独学は大変?

 インターネットでFP2級の受験について調べていると、「3級ならともかく、2級は試験の範囲も広く、内容も詳しくなっていくから、独学は絶対に不利。たとえ受かったとしても、生分かりのままになるから、今後の自分のためにならない。だから、通信教育で、分からないことをきちんと教えてもらって理解して受験するほうが良いに決まっている」というようなことが、まことしやかに語られます。
 見ていると、どれもこれも「FP2級は難しいから、安易に独学しようなどとは考えずに、無難に通信教育を受けろ」という内容ばかり。
 でもこれは、真(ま)に受ける必要がないただの宣伝です。
 こういう論調のホームページばかりができる原因(からくり)は、アフィリエイトです。自分が掲載した通信教育の広告から、閲覧者が通信教育を契約してくれると、とてもいい収入になるのですね。

 だから、その収入を得ることを目的として、読者にさも親切心から言っているような、「独学はとってもっとっても」というような記事になるのです。そうして、独学をあきらめさせて、
「勉強しやすい学習法はこちら!」
というリンクから、読者が契約してくれれば「もっけの幸い」というこずかい稼ぎを企てているのです。そのような人たちは、読者のためになるホームページを作ろうなどという気はサラサラありません。
 それで、リンクをクリックすると、フォーサイトのページに飛ぶものばかり。(こんな感じ)

合格率の掛け算は間違い

  2016年9月11日実施 ファイナンシャル・プランニング2級

実施団体 科   目 申込者数 受験者数 不受験率 合格率
きんざい 学  科 46.796 35.022 25.2% 23.8%
実技 個人資産相談業務 24.100 18.073 25.0% 60.4%
日本FP協会 学  科 20.811 18.504 11.0% 40.1%
実技 資産設計提案業務 19.796 14.153 28.6% 50.6%

 一部サイトで時々見受けるのは、合格率の掛け算です。例えば、学科が合格率40.1%で、実技が50.6%なら
  40.1×50.6=20.3% → 総合合格率 20.3%×
 ところが、これはもちろん大間違いで、日本FP協会が発表したデータによると、学科と実技を両方受験して、両方とも合格した完全合格者は37.5%でした。学科のみの合格者から、2.6%減っているにすぎません。
 これは考えてみれば当然のことで、よく勉強できている人は学科・実技ともに当然合格するし、勉強できていない人は、両方とも落ちるというそれだけの話です。
 例えば電気工事士のように、学科の合格者しか実技試験が受けられない試験なら、当然合格率を掛けたものが、総合の合格率になります。しかし、FPのように、学科・実技を同時に受けて、科目合格を出す場合は、訳が違います。
 合格率を掛け算して現実以上に少なく見せ、難しさを誇張するこけおどしに、そのままむざむざ乗せられる必要はありません。

合格率で考えるのもほどほどに

 それにしても日本FP協会の、37.5%というのは高い数字ですね。危険物の乙種4類の28.4%と比べてもかなり高いです。
 でも、合格率だけで見るとこのようなデータになっていたとしても、これら二つの資格を比べると、当然危険物の乙種4類より、2級FPの試験の方が範囲は広いし、断然難しいです。64.4%の3級FPとでもおそらくFPの方が難しいでしょう。
 日本FP協会の数字がこれだけ高いということは、それだけここの受験生がよく勉強をして受験しているということです。
 合格率は、受験者層によって、同じ試験でも全く異なってきます。(学科、きんざい23.8%、日本FP協会40.1%のように)
 合格率だけを見て試験の難易を判断するのは、ちょっと危険です。

2級FPは不受験者が多い

 データを見るついでに、余談ですが、不受験率を見ておきましょう。
 一番面白いデータは、日本FP協会の学科または実技試験だけを申し込んだ人たちの不受験率です。おおよそ学科3.5%、実技0.6%ほどです。
 一部合格者は、悔しいためか、やはりリベンジを図りたい気持ちが強いようです。ただ、それらの人の合格率は、学科30.4%、実技53.8%と、学科・実技同時受験者の学科43.2%、実技50.4%と比べて、特に学科の合格率が悪くなっています。学科・実技同時受験したときの一部不合格になる確率は、実技よりも学科の方が高いので、一部合格になってしまうような勉強が中途半端な人は、次もやはり不合格になってしまうことも多いということが分かります。
 つまり、しっかり勉強した人が、最初の受験、もしくは複数回目の受験で、学科・実技とも同時に受かってしまうことが多いということなのでしょう。
 他に、3級の場合は、学科の不受験率が、
  きんざい   21.5%
  日本FP協会 18.7%
とあまり差がないのに、2級の場合は、上表の通り、
  きんざい   25.2%
  日本FP協会 11.0%
と、かなり開きがあります。日本FP協会で2級を受けようとする人たちの意識の高さが、このデータからも裏付けられます。
 平成28年度あたりの他資格試験の不受験率とも比較してみましょう。

  2級FP 宅建 行政書士 簿記3級 簿記2級 危険物乙4
不受験率 上表参照 19.2 23.2% 21.9% 21.4% 10.8%

 2級FPは、内容が一般人の生活になじみがあるのでとりつきやすいわりに、範囲が広すぎて勉強しにくいためか、申し込んだものの途中で挫折してしまう不受験率がかなり高いです。
 3級との難易度の差に辟易(へきえき)する受験生も多いのですかね。試験の範囲はそれほど変わらないのですけれども。
 生命保険会社などで、強制的に一括申し込みをさせられた人たちの不受験が多いということも、あるのかもせれません。
 強制受験と言えば、一番に思いつくのは危険物の乙種第4類ですが、こちらは、不受験率10.8%とさほど高くはありません。
 高校生たちは、先生の指導があるから、試験時間中何もしないでただじっとしているだけでも、座りには来るんでしょうか。

2級FPに通信教育まで本当に必要?

 通信教育も、お金をかけて講義を聞けばそれはそれでよいのでしょうが、2級FPにそこまで必要でしょうか。
 2級FPは、分野が広く覚えなければならない量が膨大なので、そういう面では他の資格試験などよりも、とっつきにくく大変です。時間もかかります。
 でも、それぞれそこで問われている内容は、あまり深いところに踏み込んだものは少なくて、ただ、細々とした知識の羅列を覚えておけばおしまいです。その知識の羅列を、イメージを持たせて覚えやすくさせるのが、通信教育や通学教室など教育の役目ですが、問われる内容が表面的でしかも膨大であるがゆえに、いくらいい講義を聞いても、結局は自分が覚えないことにはどうにもなりません。
 ですから、なるべく読むだけで分かりやすいテキストを選んだら、後は地道に自分で覚えていくしかなく、2級FPの勉強ぐらいなら、それで、十分こなせるのではないでしょうか。
 例えばこれが、簿記なんかだったら、3級でも、独学できないことはありませんが、「本では伝わりにくいノウハウが講義で聞けて目が覚めた」ということも、十分ある話だとは思いますが。

 もちろん、その知識の羅列を、やはりただ羅列してあるだけの参考書(講義)と、いくらか理解しやすいように説明に工夫を凝らしている参考書(講義)との違いはありますから、教材選びをいい加減にしても大丈夫だという意味ではありません。

お金をかけた方が本当に長続きする?

 「通信教育を申し込んだ方が、お金をかけた分あきらめにくい」というようなことも、まことしやかに語られます。でもこれ本当でしょうか。
 私の場合は、いろいろ独学で試験勉強をしてきましたが、一番お金をかけて、勉強もしていないのにたくさん一度に教材をそろえた行政書士の試験で、途中で嫌気がさして、勉強を最後までできませんでした。
 お金をかけて、「それが無駄になるのは嫌だ」という気持ちとは裏腹に、勉強が難しいと、「やっぱり、本気になれず、だらだらとなし崩しに勉強をしないまま終わってしまう。」というのが人間なのではないでしょうか。
 だから、「お金をかけた」というのは、さほど、あきらめないための抑止力にはなりません。
 まだやってない、「やるべき教材」が山積みになるだけでも、もう嫌になってしまうのです。
 昔、宅建の試験だけ申し込んで、受験に行かなかったこともあるし。
 「通信教育なら、分かるまで、すぐに質問ができる」というのも、どうでしょうか。確かに、質問の場は設けられているのでしょうが、それを何回利用するでしょうか。
 質問できることに安心して、結局はほとんど質問せずに終わってしまうことが多いのではないでしょうか。
 今はインターネットが発達している世の中なので、大概のことはインターネットで検索すれば間に合います。
 「添削がある」というのも、マークシート式の試験なのに、添削をして、それがどれだけ効果的でしょうか。
 「通信教育ならわかりやすい」というのもどうでしょう。本にしてもいい本、どうしようもない本があるのと同じように、通信教育も、どれが自分に一番合うか、選ばないといけません。確かに数ある本の中から、自分にとって一番理解しやすくためになる独学用教材をいちいち選び出すのは大変です。
 でも、通信教育の場合でも、一番宣伝がうまくて一番売れている教材を買ったからといって、一番分かりやすいという保証はどこにもありません。
 通信教育は、教材がすべてセットになっている分、教材選びをいちいちする必要はありません。でも、そのセットになっている教材がベストなのかどうなのかは、そう簡単に分かるものではありません。
 ですから、通信教育を選ぶというのは、大金をかけて、「多分よいはずの教材群を買う」という大ばくちをするのとさほど違いはありません。結果的に、その通信教育を選んだ勘が当たっていればよいですけれどね。
 結局、通信教育では、教材選びは、多少楽になるというメリットはあっても、「自分でペースを作って、自分で計画的に勉強しなければならない」という独学の最大のデメリットは、ほとんど解消されません。

独学では教材選びが最重要

 通信教育も含めて、独学するなら、どのような教材を選ぶかが一番重要です。
 「売らんかなのテキスト」は、人気の資格試験ならたくさん出版されています。ですが、本当に読者のためを思って、読者に本質的な理解を促すために、分かりやすく作られた参考書というのは、とっても少ないです。
 そこを何とか、自分に合う参考書・問題集を求めていかなければならないので、独学する時には、最初の教材選びが一番手間がかかり、かつ大変かもしれません。そして、重要です。
 出版されている安価な書籍よりも、高価な通信教育の教材の方が分かりやすければ、考え方は簡単ですが、おそらくそうではないのだと思います。
 ですから、インターネットなどの評判ももちろん参考にはしますが、それだけではだめで、大きな本屋で実物を実際に手に取って、一番自分にとって使いやすい教材を一つ一つ自分の目で選ぶ努力をしないといけません。
 これは、めちゃくちゃ大変ですし、どれが一番良いのか判断がつきかねるることも実際には多いのですけれどもね。
 本の宣伝もアフィリエイトができるので、売れ筋の本を並べただけのアフィリエイト目的のページの宣伝文句を真に受けて参考書・問題集を選んでしまうと、評判がいいはずなのに、あまりよくはなかった、ということも結構あるはずなので要注意です。
 書店での取り扱いがない、アフィリエイトリンクを貼れない本を紹介しているホームページなどほとんどありませんから、書評の主がどういう人物なのか見極めることも必要です。

音声講義はやはり魅力

 通信教育には、詳しい画像講義がついているものが多いです。
 でもすべて詳しい講義が付いているわけではなくて、ガイダンス講義的なものしかついていないものが、大手通信教育メーカーにもあるので、要注意です。
 そういうのは、ただの添削付きセット参考書・問題集群にすぎません。
 詳しい画像講義が分かりやすく飽きさせないものであるならば、これはたいそう魅力があります。通信教育を選ぶ大きな理由になるでしょう。
 私の場合は、画像にはこだわりません。ですが、音声で講義が聴けるというのは、とても勉強しやすい大きなメリットだと考えています。
 車の中で聞きたいので、私はDVDよりも主にmp3のファイルが欲しいです。自宅で空き時間を作って腰を据えて聞かなければならないのは、大量の時間がかかって、結構な時間のロスです。
 ですから、通信教育にはほとんど手を出しませんが、音声講義付きの書籍であったり、ユーチューブでの講義であったり、できるだけ安価に使いやすい良い音声講義を手に入れる努力はしています。
 通信教育の画像講義でも、簡単にはmp3をダウンロードできないものが多いと思うので、そのあたりも考えておいた方がよいかもしれません。

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